滋賀県立大学 工学部 材料科学科 エネルギー環境材料 分野
滋賀県立大学 工学部 材料科学科
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研究内容
エネルギー環境材料から人類・自然環境・社会への貢献へ
2007年に「エネルギー環境材料分野」が発足いたしました。研究全体のキーワードは,「光・量子情報・エネルギー」。原子配列が調和した機能物質の設計・合成・評価・応用を通じて,人類・自然環境・社会へ貢献していきます。具体的には、新規太陽電池材料・量子コンピューター用材料、水素吸蔵材料の研究開発などを行っています。スタッフと学生が目標に向かいそれぞれの得意分野を生かしながら、連携して研究を進めています。
◎ 独立行政法人 科学技術振興機構(JST)
研究成果展開事業(スーパークラスタープログラム)サテライトクラスター
「地産地消型スマートグリッドを実現する分散型で高効率なエネルギー開発と多様化された供給システムの構築」(2013/11-2018/3)
◎ 共同研究(英文論文・学会発表等)
株式会社クリーンベンチャー21:球状シリコン太陽電池
オリヱント化学工業株式会社:フタロシアニン系太陽電池
大阪ガス株式会社エネルギー技術研究所:TiO2ナノ粒子系太陽電池
大阪ガスケミカル株式会社フロンティアマテリアル研究所:ポリシラン系太陽電池
九州大学:ナノ粒子応用有機薄膜太陽電池
滋賀県東北部工業技術センター:半導体物性評価
◎ 環境調和型第三世代太陽電池の研究開発
本研究の目的は、従来のシリコン系太陽電池に代わる、安価で環境にも配慮した環境調和型第三世代太陽電池の研究開発を行うことです。高効率発電を目指すとともに、その発電機構・電気伝導機構を量子物理学的手法を用いて明らかにしていきます。具体的には、有機系半導体、ペロブスカイト型化合物、ポリシラン、フタロシアニン、フラーレンや量子ドットなどの新しいナノ構造を用いて、高効率・低価格・自然環境にやさしい新しいタイプの太陽電池の研究開発を目指しています。また、高分解能電子顕微鏡・結晶学及び第一原理計算により、ナノ構造物質の原子配列・電子状態・磁気構造を解明し、新規材料開発に貢献しています。
◎ ペロブスカイト系有機無機ハイブリッド太陽電池
ペロブスカイト構造をもつCH3NH3PbI3 用いて、高効率有機−無機複合型太陽電池が発表され世界中で話題となっています。有機薄膜太陽電池の全固体型薄膜形成プロセスによる有機ヘテロ接合と、色素増感型太陽電池の多孔質金属酸化物を半導体として使用する構造を組み合わせ、有機薄膜太陽電池より高い変換効率と色素増感型太陽電池より高い耐久性を同時に得る太陽電池の研究開発を進めています。
◎ 銅酸化物系太陽電池の研究開発
酸化物半導体はSiに比べて、作製プロセスが簡易で、直接遷移半導体で光吸収係数が大きいという利点があります。銅酸化物半導体は、バンドギャップ(CuO: 1.4 eV、Cu2O: 2.1 eV)が、太陽光のスペクトルに近く太陽電池に適しています。p型半導体として銅酸化物、n型半導体としてZnO等を用いて太陽電池を作製し、特性を評価しています。
◎ フラーレン集合体の有機電子材料への応用
フラーレン類はn型有機半導体として優れた特性を備えています。フラーレン類にアルキルアミン類が容易に付加する反応を用いて、フラーレンとジアミンからフラーレン集合体を得る事が可能です。このフラーレン集合体を新規有機半導体材料と位置づけ、光電変換や太陽電池への応用を進めています。
◎ 電解重合法を用いた新規太陽電池の開発
ポリチオフェンに代表される導電性高分子とフラーレンなどの有機電子材料を組み合わせた有機薄膜太陽電池は次世代の太陽電池のひとつとして注目されています。このような太陽電池の光電変換特性を制御するためには、界面構造の制御は極めて重要です。そこで、階層構造が容易に作製可能である電解重合法の特徴を活かし、新規な有機薄膜太陽電池を構築する研究を進めています。
◎ 金属ナノ構造による光電変換素子や太陽電池の高効率化
金属ナノ構造に光を照射すると、光が表面プラズモンに変換されてナノ構造直近に局所的に増強された電場が発生します。この電場は光と同様に色素の励起が可能である特徴を有しています。このように局所的に貯め込まれた光エネルギーを光電変換素子や太陽電池に応用すると、より効率的な光エネルギーの利用が可能となり、光電変換効率の高効率化が期待できます。
◎ 金属ナノ構造を用いた分光分析の高感度化
金属ナノ構造周囲のナノ空間に生じる増強電場を用いると、ラマン散乱や蛍光発光分析の高感度化が可能です。増強電場発生能を持つ種々のナノ粒子やナノ構造を作製し、分光分析への応用を進めるとともに、高感度化の詳細な機構解明を進めています。
◎ 炭素クラスターや金属錯体を利用したNMR量子コンピューターの開発
炭素クラスター、金属内包フラーレン-SWCNT、マルチデッカーフタロシアニン金属錯体を利用したNMR量子コンピューターの設計・構築とスピン制御を行っています。量子化学計算に基づいて、分子構造、電子構造、磁気的相互作用を制御し、スピンの集積化、高速計算の向上を目指しています。
◎ フタロシアニン錯体を導入したペロブスカイト系太陽電池
フタロシアニン錯体を導入したペロブスカイト系太陽電池を作製し、その特性評価を行なっています。フタロシアニン金属錯体のホール輸送特性を検討しています。表面形態、分光特性、光伝導機構を明らかにしながら発電効率の向上を試みています。
◎ 遷移金属や希土類元素を導入したペロブスカイト結晶の電子構造
遷移金属や希土類元素(Eu)を導入したペロブスカイト結晶の電子構造や性質を第一原理計算法により予測し、遷移金属や希土類元素の添加効果を検討しています。特にHOMO、LUMOの電子密度分布、Fermi準位付近の状態密度(DOS)、吸収特性、励起過程、ケミカルシフトから電子相関を明らかにしています。IR/Ramanの振動モード、エンタルピー、Gibbs自由エネルギーから電子-格子相互作用を考慮し、光起電力機構を明らかにしながら発電効率向上を目指しています。
◎ 球状シリコン太陽電池の構造と物性
現在の太陽電池の問題点である高コストを抑制する新しい太陽電池が球状シリコン太陽電池であり、株式会社クリーンベンチャー21において研究開発が進められています。本研究では、太陽電池用球状シリコンの微細構造、電気・光学特性などの物性評価、反射防止膜の構造解析などを行い、光電変換効率上昇のための指針を得ることを目的としています。