滋賀県立大学 高分子機能設計研究室

高分子ゲル

伊田・金岡チーム

Theme 1

精密重合化学を基盤とした高分子ゲルの網目構造設計

 高分子の三次元網目の内部に水などの流体を多量に抱えた構造を持つ高分子ゲルは、さまざまな応用が期待される材料であり、多くの研究が展開されています。しかし、構造の複雑さゆえに合成化学を基盤とした研究はあまり進んでいません。私たちのグループでは、精密重合化学を基盤として、ゲルの網目構造を精密設計するとともに、得られるゲルの機能創出に関する研究を進めています(総説:Polym. J., 2019, 51, 803.; 高分子論文集, 2017, 74, 365.)。

Theme 2

架橋ドメイン構造を設計した新規両親媒性ゲル

 2種類の高分子を組み合わせてできる両親媒性ゲルは、それぞれの高分子鎖に基づく複合的な性質を発現する魅力的な材料です。両親媒性ゲルの機能化には、それぞれの高分子鎖に加えて、ゲルの重要な構成要素である架橋構造の空間的配置を効果的に設計することが重要です。私たちは一方の高分子鎖にのみ架橋構造を導入した「架橋ドメイン構造」を持つゲルが特徴的な膨潤挙動や刺激応答性、力学特性を示すことを明らかにしています。さらに、無機化合物の導入を含め、さまざまな架橋ドメイン構造を設計した新規機能性ゲルの開発を進めています。

Theme 3

モノマー配列を意識したゲルの設計および物性発現メカニズムの解明

 水中で温度変化に対して可逆的に体積を変化させる温度応答性ゲルは、外部の環境変化を材料自身が認識して作動する「スマート材料」として注目されています。私たちは、単独では応答性を示さないモノマーについて、特定の2種類組み合わせたときに応答性を発現することを見出しています。また、それらの配列(並べ方)を変化させると大きく性質が変化することも明らかにしています。このようなゲル中のモノマー構造や配列の違いが物性に与える影響を詳細に調べ、新たな材料設計指針の確立を目指しています。